女性問題・高齢化問題評論家 東京家政大学名誉教授 樋口 恵子 氏
高齢化社会の到来、人生 100 年社会といった新しい価値観の中での新しい地域社会づくりに必要な男女共同参画の考え方(男女の対等なパートナーシップ)などについて楽しくお話しいただきました。
この 10年でなくしたもの・得たもの
この 10 年でだめになったこと、嫌になったこといろいろありますよね。この10年のワーストを私が挙げるとすれば、まず「雇用の劣化」です。これは女性の地位にも関することですが、男性の方もニートだとかフリーターだとかいって、非正規雇用が非常に増えている。少子化だなんていったってお父さんフリーター、お母さん派遣社員でこどもが産めますか?こどもが6歳になったとき、ランドセル買ってやれるかどうかわからないところで誰が産めるか、という話です。
この 7 年間、自殺者は 3 万人という大台から減っておりません。この自殺というものはまさにジェンダー(文化的社会的性差)による男の不幸を目の当たりにするものです。3 万人のうち7割が男性です。一家の大黒柱であるお父さんがリストラにあったり、借金に苦慮したりする世の中です。自分の生命保険で借金を返してもらいたいという遺書を書いて死んでいくお父さんもいるのです。この時、お母さんも同じ立場で働けていたら、自殺者は減ると思っております。
良いことを見ると、この 10 年くらい 21 世紀型の法律ができた時代もございません。私の関わった法律だけでも少なくとも 3 つはできています。 1 つ、地方分権一括法であります。地方と国が上下主従の関係ではなく、地方のことは地方で決める。そしてこのことによって行政と住民が同じ目線でこの地域の幸せづくりに励んでいく。その基本が整ったのがこの地方分権一括法であります。
そして介護保険法、民間に市場を開放したためにここまで広まりました。また、この法律は市民会議など住民の参画を促した珍しい社会保険法でもあり、改正により、ますます市民参画の部分が進みます。最近の法律では、このような住民参画のあり方が書き込まれているものがおそらく増えているはずでございます。
それから特定非営利活動推進法でございます。この法律は阪神大震災などをきっかけにして、日本で初めて官が民の存在を認めたもので、今や NPO 法ができて日本中に 2 万何千という NPO 法人ができました。
私はこの 10 年間、本当にいい法律ができていて、これらのキーワードは、“対等なパートナーシップ”だと思っております。国と地方の対等なパートナーシップ「地方分権一括法」。官と民の対等なパートナーシップを示す「特定非営利活動推進法」、個法でいえば「介護保険法」。そして極めつけが今日のタイトル [ 「男性と女性の対等なパートナーシップ」ということでございます。
人生 100年社会
一番大きな変化、それは、今や人生 80 年から 100 年社会を迎えたということです。人生 100 年なんていうのは、すごい可能性に満ちているんです。
また、これからの時代はこどもの時代であると同時に高齢者の時代となります。人口統計では、 2050 年、日本の 65 歳以上は人口の 4 割。そのうち約 6 割が女性です。つまり日本中の国民の 4 人に 1 人は「おばあさん」です。これを「おばあさんの世紀」と言わずして、男性を含めた「高齢者の世紀」と言わずしてなんとしましょう。 4 分の 1 のおばあさんが、今のように社会的弱者といわれる立場で、社会保障もなく、持ち家もなく、資産形成もできず、そして精神的にも「あなたについて行きます」とか、そんなことをいっていたら、 21 世紀半ばの日本政府は貧しいおばあさんの生活保護に追われて何にもできません。
だから私は、今の若い学生、すなわち「 21 世紀のおばあさん」に呼びかけているのです。「 2050 年のおばあさん盛りはあなた方です。あなた方がどのようなおばあさんになっているかが、 21 世紀の日本を左右する。どうぞ日本社会を背負って立つ人口の 4 分の 1 のおばあさんになれるよう、今の日本社会の男女の関係性や、性別役割分業システムをしっかり見据え、仲間を増やして、ノーと言うところにはノーと言い、きちんと対案を出して、男も女も幸せになれる男女共同参画型の社会を紡ぎ上げていく。それがあなた達の今後の人生なのです。私もそれなりにやってきた。どうぞこの意志を継いでほしい。それを昔から“老婆は一日にしてならず”というのである。」と・・・。
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